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『パリ、娼婦の館』(1)

『パリ、娼婦の館』
鹿島茂著 角川学芸出版

1、概要
 19世紀パリの売春について解説した本。著者はフランス文学者だが、くだけた文体で読みやすい。

2、公娼
(1)公娼制度
 当時のフランスでは一定の条件の下に売春が認められていた。
 娼婦を登録すること、定期的な性病の検診を受けること、看板を出してはならないこと、経営者は女性であること、などの条件があったようである。
 公娼館は「閉じられた家(メゾン・クローズ)」、「認可の家」、「社交の家」などと呼ばれていた。本書では、主にメゾン・クローズという名称が使われている。

(2)娼館の宣伝
 娼館は看板を出してはいけなかったので、チラシなどを配って宣伝していた。また、既に風俗雑誌のようなものがあったという。

(3)娼館の建物、内装
 高級娼館は貴族の邸宅を買い取ったものなど、かなり壮麗なものもあったようである。また内装も豪華であった。貴族や富豪向けである。本書には、贅を尽くした寝室の写真がいくつか掲載されている。
 SM用の部屋も用意されていた。貴族や富豪にはマゾが多かったという。

(4)仕事の手順
 娼婦はサロンに集められ、ここで客が多数の娼婦の中から相手を選ぶことになっていた。娼婦たちは、全裸または全裸にガーターベルトだけなど妖艶な格好で現れ、客の前でエロティックなポーズをとってアピールしたという。客は、その中から一人ないし数人の娼婦を選んで個室に入った。

(5)娼婦の日常
 娼婦は昼頃に起き、入浴や化粧などして仕事の準備をする。浴室のない娼館もあったようで、そういうところではオーデコロンでからだを拭くだけだったという。
 開店は6時ごろで、仕事は早朝4時から5時ごろまで続いた。
 娼館は原則として住み込みだった。娼婦たちは屋根裏の大部屋で生活させられた。個室はなく、ベッドも二人で一つだったという。しかし、食事は豪勢だったという。当時のパリの住宅事情はよほど悪かったんだろうか?
 ある娼館では休暇は2週間に一回だったという。どのくらいの頻度が普通であったかは資料が乏しくよく分からないらしい。

(6)報酬
 客が払う料金の半分以上は店の取り分となったようである。ひどい所では7割ほどを店が取った。そのほかにも、娼婦たちは住み込みだったので食事代、毛布代、衣装代などいろいろな料金を請求され、搾取されていたという。

(7)安娼館
 大衆向けの格安店では一回あたりの料金は、日本円に換算して4000円から5000円くらいであったという。
 営業時間は午後二時から午前二時までだった。この十二時間のうちに、娼婦たちは50人ほどの客を取ったという。実際の行為の時間は、一人当たり10分もかからなそうだ。
 これは本書の内容ではないが、今でもヨーロッパの飾り窓などは10分程度で終わりらしい。

(8)求人
 娼婦の求人は、求人広告が出されることもあったが、多くは口コミで勧誘されたという。たとえば、ある女工が娼婦となると、かつての工場の仲間で金に困っている者がいると娼館に勧誘したりするそうなのである。

(9)変わったサービス
 ある娼館では一階がレストランとなっていて、そこに娼婦たちがたむろして、客の飲み相手となっていた。今のキャバクラに近いことをしていたようである。客は気が向けば、その中の一人また数人の相手を選んで個室に入ってもいいし、酒を飲んで帰るだけでも良かった。
 ある娼館では、中にレストランがあって、そこのウェイトレスは裸エプロンで給仕していたという。

(10)変態嗜好
 高級娼館ではSM用の部屋があった。ヨーロッパでは子供は鞭でしつけるのが当たり前で、だれも子供の頃に鞭で打たれた経験が一度くらいはあった。そのため、SMといえば鞭が好まれた。
 他にもスカトロ用の部屋とか、覗き部屋などもあったという。自分がやるよりも見るだけを好む客もいれば、人に見られながらやることを好む客もいた。
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